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DAMDAM

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Ron Herman Journal

Issue 93Posted on Apr 10.2024

シソ、こんにゃく、甘夏、抹茶、米ぬか、キクラゲ……。日本ではおなじみの食材がスキンケアの原料になっていると耳にしたら、驚かれる方が多いのでは。試しに、ボディウォッシュを手にしてみましょう。シソのさわやかな香りが天然由来成分とのブレンドによって、フレッシュでエレガントな芳香に。テクスチャーも滑らかでしなやか。日本発のスキンケアブランド「DAMDAM」(ダムダム)は、今国内のみならずアメリカでも注目を集めています。手がけるのはジゼル・ゴーさんとパートナーのフィリップ・テリアンさんです。



2018年、ジゼル・ゴーさんとフィリップ・テリアンさんによって日本でスタートした「DAMDAM」(ダムダム)。名前の由来はジゼルさんのルーツであるフィリピンのタガログ語。「『フィーリング』や『感覚』という意味です。人が使ったときに、本当にいいフィーリングの気持ちでいられるようにしたかったんです」とジゼルさん


現在は東京で暮らしている二人ですが、ジゼルさんはシンガポールで長年ファッション雑誌の編集長として活躍、フランス出身のフィリップさんは10代から日本で暮らしファッション業界にたずさわってきました。10年前に来日したジゼルさんですが、ずっと気になっていたことがありました。「編集長のころから、いろいろなビューティ系のアイテムを使う機会が多くて、ほとんどのブランドを試してきました。ですが、自分の肌に合わないものが多くてアレルギーになることも。日本はヨーロッパと比べて肌にやさしいコスメが多いので、来日する前に期待していたんです。ですが、実際はナチュラルではない原料をたくさん使っていて、いわゆるクリーンなコスメはすごく少なかったんです。日本のコスメブランドはすごくリスペクトして大好きなんですが」。



ハンドクリーム、シャンプーやコンディショナーなどスキンケアアイテムを多角的に展開する。どれもが天然由来でクルエルティフリーなので、肌にやさしい。スタイリッシュなパッケージデザインはフィリップさんの手によるもの


お気に入りのスキンケアが見つからず、エッセンシャルオイルから自分好みのスキンケアアイテムを自作してきたジゼルさん。それなら、ナチュラルで安心で安全なクリーンなスキンケアのブランドを自ら立ち上げようと思ったのです。そして、フィリップさんに相談をすることに。「両親がナチュラル系の暮らしをしてきたので、とても影響を受けました。昔から、デオドラントは自分でつくってきましたし。ですから、彼女から話が来たときに、『すごく興味がある』と、すぐに乗る気になりました」。こうして、DAMDAMが誕生することになったのです。



DAMDAMのアイデアソースの一つとなっている二人のセカンドハウス。海風が通り抜ける空間には、ゆったりとした時間が流れる


ジゼルさんとフィリップさんが、DAMDAMのコンセプトとしたのは「日本の先端技術と日本の伝統的な原料」との融合。旅好きな二人は、月に2回ほどドライブをしながら、日本各地を巡ってきました。そして、地方に息づく伝統的なクラフトマンシップや四季折々の自然に根差した農業に触れてきました。日本にはすばらしい文化や素材がたくさんある。その発見がインスピレーションになったのです。「日本の安全性と厳格な品質基準に従って生産をすることで、安心して使える最もクリーンなスキンケアができると考えました。再生農業により栽培された原料を使用、オーバーパッケージングしないことで、地球にとってもクリーンでやさしくできると考えました」とフィリップさん。



セカンドハウスの庭で栽培しているハーブでサンプルをつくることも。DAMDAMの原料の一部は、旅先で出会った農家たちとコラボレーション。「東北の有機農法にこだわる若い米農家さんにお願いして、あぜ道などの未耕地でシソやハーブを育ててもらい100%買い取っています」とフィリップさん。


それにしても、日本人が食材としてとらえている素材を、スキンケアへ昇華させるというユニークな発想はどこから生まれるのでしょうか。海外出身ならではの新鮮で客観的な視点があるからだけではありません。その答えは、二人のライフスタイルにあるのです。普段は東京をベースに活動していますが、木曜日になるとある場所へと向かいます。神奈川県三浦半島にあるセカンドハウスです。



今シーズン、ロンハーマンが別注した「トラベルセット」。さまざまなDAMDAMのスキンケアをお手軽に楽しむことができる。「旅をするのはすごく好きなんですけど、ホームシックになるのは嫌なので、できるだけ自分の家にいるような感じになるために使っています。」とジゼルさん


都内からクルマで1時間ほどの距離ですが、空は澄んで海岸からは心地いい潮風が漂ってくる自然豊かな環境です。二人が「ひと目ぼれをした」という古民家は小高い丘に建ち、静寂に包まれながら眼下に海原が臨みます。週末にリラックスして過ごすには最適な空間でしょう。驚くのは、庭に実っているたくさんのハーブや野菜です。レモンバーム、パセリ、コリアンダー、ミント、ナス、トマト、カリフラワー、オクラ、カボチャ、キュウリ……。何と多彩なことでしょう。大の料理好きのフィリップさんが、自分たちで育てた四季の恵みを材料に腕を振るうのです。そこからスキンケアのヒントが生まれることも。「シソも本当にうちの庭から出てきたアイデアですね。シソをコスメに使うということは、今までなかったんですよ。どちらかというと料理にしてもあまり目立たない存在。ですが、体にもいいし、すごくおもしろい素材だと思います。最初は『今までないから、やめたほうがいいよ』と周囲に反対されましたが」とフィリップさんは笑います。



4月12日(金)から21日(日)まで、千駄ヶ谷店にDAMDAMのポップアップショップがお目見え。それに併せて、カフェにはスペシャルメニューの「DAMDAM 甘夏ソーダ」と「DAMDAM 紫蘇&グリーンズパスタ」が期間限定で登場。DAMDAMとともに日本の伝統的な食材のおいしさを楽しんで


DAMDAMには、ジゼルさんとフィリップさんの大切な思いが込められています。それは「DAMDAM は私たちにとって日本へのラブレターです。 日本の美しさへようこそ」というメッセージ。「本当に日本の良さをリディスカバー(再発見)してもらえたらいいなと思っています。世界の方はもちろんですが、日本の方にも」とジゼルさん。「すごく日本に住むのがうれしいし、海外出張をするたびに『早く帰りたいな』というような気持ちになって、後何日と数えてしまう。あまり良くないんですけどね(笑)。僕らは日本生まれではないから、日本人が見られない部分を見られているかな、というのがあると思うんですよ」。最後に「日本」とはどのような存在かと二人に質問をすると……。「ホーム」と顔を見合わせてほほ笑むジゼルさんとフィリップさんでした。



「世界のどこへ行ってもクラフトマンシップが消えつつありますが、日本ではクラフトとか職人さんを国全体で尊重して守っていると思います。今後、そういう方々とコラボしていきたい」と口にするフィリップさんの言葉に、ジゼルさんも深くうなずく。今後、DAMDAMは東京にショップをオープンする予定。スキンケアに加えて、さまざまなライフスタイルのアイテムも展開したいと意欲を燃やす

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